パトリック・シャボーン氏 (Mr. Patrick Schiavone 46歳)
中国・インドなど、アジアの好景気が続き、世界的な石油需要が毎年旺盛になった 2000年台初期、
原油価格はついに 50ドルを突破。 同時にこれまで北米市場において唯一参入のなかった
大型 SUV・トラック市場に欧米、日本、韓国のメーカーが続々進出。 ビック 3のシェアは毎月
落ち込み、さらにガソリン価格の高騰でトラック・SUV在庫の山と化してしまった。
そんな悪化一方の環境の中、また一人の男がフォード社の中で立ち上がった。
「力強い車を作るんだ、原点に戻ろう! 」……. そしてプロジェクトは始まった。
「♪ ツバメよ~ 高い空から 教えてよ 希望の星を ~ ~」
2006年型フォード・エクスプローラーは、私が描きました !
とういうことで、2002年型、第 3世代のエクスプローラーを描いたJメイズ氏 2月 15日のブログを
ご参照下さい ) の二番煎じではあるが、2006年新型エクスプローラーを描いたのはこの人だ !
パトリック・シャボーン氏 (Mr. Patrick Schiavone 46歳)、
現フォード北米トラック・デザイン・ディレクターおよびフォード車デザイン責任者。
大きな写真はこちらで PDFファイル (4ページのうち 2ページ目) です。
オハイオ州アクロンで生まれたシャボーン氏は、1976年にオハイオ州にある「ウォルシュ・ジェスィット
高校・工業デザイン学部」を卒業。 高校時代にはストリート・レーシングに明け暮れし「やんちゃ」な
少年期を送ったのち、今度は日本でも多くの EX乗りが何かに取り付かれたかのようにはまり込んで
いる車のカスタム化に没頭。 趣味が高じてそれが仕事になったかのようにフォード社に入社し
今年で16年目となる。
これまで主にトラックのフレームなどのデザインを担当してきたが、シャボーン氏が描いた車は数多く、
エクスペディション、リンカーン・ナビゲーター、1994年型マスタング、F-シリーズ・トラックそして
フォーカスと一般量販車のほかに、マイティ F-350トンカ、ハーレー社とのコラボレーションである
F-150、2006年型リンカーン・トラック・マーク LTなど、多種のデザインを手がけた経歴を持っている。
シャボーン氏の名が一段と有名になったのが、 このクラスのベンチ・マークとなった 2004年型
F-150トラックの開発・デザイン・チームのデザイン責任者となり、ベスト・セラーを達成した
ことであった。
2004年型、F-150 トラック ↑
のちにこの 2004年型 F-150は、BMWX3、ダッジ・デュランゴ、ニッサン・アルマダなどを抑え、
「2004年 全米トラック・インテリア・オブ・ザ・イャー」大賞を受賞している。
004年型 F-150 トラック・インテリア ↑
現在は SUV、ピック・アップ・トラック、フル・サイズ・バン、商業トラックやマーキュリー部門の
デザインを監修責任を担当しており、フォード社デザインチームの屋台骨を支える二人の主要
デザイナーの一人。
一人は現在ベスト・セラーを続けている 2005年型マスタングを描いた「 ラリー・エリクソン氏
( Mr. Larry Erickson ) 」であり、もう一つの収益源であるトラック部門を骨太にしたのが
2006年型エクスプローラーを総監修した 「パトリック・シャボーン氏 (Mr. Patrick Schiavone ) 」
なのである。
この F-150のデザインにおいて、シャボーン氏は一つの哲学を持っていた。
「 F-150はフォード社の主食であり、ブランドなのだ。 20年間米国でベスト・セラーとなったこの
車から、デザイン変更に対して会社は数多くの知識をもらった」。
ただシャボーン氏の野望は、単に車のデザインだけに留まらない。 「いかにして売れる車を作る
ことで、フォード社により多くの利益をもたらし、会社そのものを再度復活なければならない。
目指すところは数十億ドルのコストカットとマーケット・シェアの奪還である。 そのために我々の
成し遂げなければならないことは、BMWやメルセデスが一瞬で欧州車と分かるようなスタイルを
していると同じく、我々はアメリカンな車を作ることを目標としている。
海外メーカーに奪われたシェア回復が究極の目標」。 「ターゲットにしたい顧客は壮年層ではなく、
ベビー・ブーマー (1945-55年生まれ)」と述べている。 (2003.05.14)
「私は今がアメリカン・ルーツを見つめ直す時と確信しているが、アメリカンという意味は非常に
複雑な意味を持つと思う。 そのフレーバーを一番持っているのが、ベビー・ブーマの層と考える。
我々は自己のデザインの方向性を考えつつ、自社が発展するように行動する」と、真っ向から海外
メーカーと戦う姿勢を明らかにしている。
「顧客が将来どんな車を買いたいというのではなく、今買いたい車を描きたい。 今後工場から
出てくる車がショー・ルームに飾られるまで、あと数年必要かも知れない。 2008~2009年に私は
そこにいると思う。 自動車のデザインは社会のトレンドに沿ったものになるし、基幹になる年代に
適合するものにしなければならない。 もっとも必要としている年代に合った車を作るのが私の使命。
そうすることによってフォード・ブランドにまた帰ってきてくれるユーザーがきっといると思う」、
としている。
シャボーン氏の考えとして、「米国自動車業界は、何十年にわたり品質の欠如が大きな問題で
あった。 しかし現在は日本車や欧州車とタイマンを張るところまで来ていると確信している。
米国国内では未だフル・サイズ・トラックを望む声が大きい。 このニーズに応えるため、私は
1ガロン当たり 50-60マイルまで燃費の伸びる車を作りたい」と、意欲満々だ。
2002年モデルをデザインした J メイズ氏はアウディ社など欧州自動車会社でのデザイン経験が長く、
その影響で第 3世代のエクスプローラーは欧州フレーバーがかかった、 大人しい中に優雅さを
かもし出したスタイルになっていたように思われる。
その一メンバーとして 2002年型エクスプローラーのデザインに携わったシャボーン氏、今回開発の
責任者となったことで、現行のスタイルを保ちながら、2006年型において現行モデルとの決定的な
違いをそこに取り入れた。 それが彼の言葉に表されている。
* 「強いフォード (tough Ford) を演出したい」
* 「メタル・カラー、これがアメリカンだ。 メッキ部品の多様化に米国を感じてほしい」
* 「外国メーカーより劣っていた品質管理は、すでに対等になった」
* 「フォード・マークは一回り大きくした。 我が社を感じてほしい」
* 「2006年型のエクスプローラーに、従来のエクスプローラーの常識全てを取り入れた。」
* 我々は考えるというより、トライしていく。
* 我々はエクスプローラーを気にしているあなたを、悩ませる人に変えてみたい。
2006年型、エクスプローラー・インテリア
シャボーン氏は自分の造形にクラッシックなデザインを好むと述べている。 ただ彼の「古い概念 」
とは、退職後 気力をなくして毎日を送るおぢさんのようなものではなく、シガー・バーのような
トラディショナル・デザインに囲まれた光景を意識しているそうだ。
シャボーン氏は自らの講演やインタビューなどにおいて、「現在は誰もが品質の高い商品をその場で
手に入れることが出来る。 一人一人がやってみたいと思うことが最も重要なことなのである。
どのようにその車にデザイン的価値、カルチャー、感覚を揚げるのかが自分の使命である」と、
自分の信念とフォード車の未来像を表現している。
これまで何台もの車を描いてきた。 色々なことを考えながら画用紙に車の絵を描く子供の一人
だったかも知れない。 決して優秀なメカニックと思っていないが、
今回の 2006年型エクスプローラーのデザインで表現したかったのは
「 “アメリカン・スピリット” であり、"アメリカン・ルーツ"なのだ 」、と締めくくっている。
[ 独り言 ]
最初06型の EXを見たとき、なんか違和感あるなーって思いました。
でもグリルやルーフ・バーが何故にメッキになったか分かるような気がします。 細部の写真などを
見てみると、しっかりとした作りとますますの電子化になっていますね。 エンジン・操作性・安全性
そして経済性が増した新型エクスプローラー、徐々に魅力が増してきたかもしれません。
右ハンドルがあればなーーーーぁ。
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