経済関係の本を買いにふらっと本屋に立ち寄り、関連コーナーの棚を探していると
下記のような書籍に目が留まりました。
タイトル : 逆転の経営戦略 株価至上主義を疑え
著 者 : ヴェンデリン・ヴィーデキング
(ポルシェ社 最高経営責任者)
出版社 : 二玄社
価 格 : 1,785円
表紙の帯を取り去ると、こんなデザインです。
よく目にするポルシェ各モデルなどを紹介した本ではなく、
ヴィーデキング CEO 自らが書き下ろし、1990年代苦境に
陥った同社を立て直して行ったかを綴っています。
日本のカイゼン方式導入と現場の葛藤。 新911への野望、
カイエンの開発。 そしてなぜフォルクス・ワーゲン社を、
ポルシェ・グループの傘下に納めたか などなど。
ポルシェをお持ちの方なら、サクサク読める経済書籍。
寒い一日を自宅で過ごす、暇つぶし手段の一つにになるかもです。
ドイツ株式市場が、大変なことになっています。
こんなことを書くと最近の世界同時株安を受けて、ドイツ株式市場が大暴落をしていると
思われがちですが、今週に入り なんと 「 フォルクスワーゲン社 」 の株価が、半端でない
上昇を示しています。
先週金曜日のフォルクスワーゲン社の株価終値は、一株 210.52 ユーロ ( 約 2万 4,900円 ) 。
それが本日 18時現在、920 ユーロ ( 約 10万 8,600円 )。 今週月・火曜日の一日と一時間で、
なんと 4.3 倍もの上昇です。
今日は日経平均も一時 7,000円の大台を割り込み続落となりましたが、なんか公的資金の買いが
入ったとの囁きで、引けはは 7,621円と前日比約 500円高で終了したようですね。
麻薬のようなカンフル剤的 買い入れiによる、大幅株価上昇。 一過性の現象と思えてなりません。
では日本の株価反発が、フォルクスワーゲンの株価に影響があったのでしょうか。
確かにその効果も否定する訳ではなく、ドイツ株式の指標となる DAX指数も 4,700台に戻り
+ 400ユーロ以上の上昇。 前日比約 10 % 近いプラスとなっています。
ただこの DAX指数と比べ、フォルクスワーゲン社の株価上昇率は、明らかに異常。
先週末一株の株価が 210ユーロ、。それが 4倍以上になり、本日の取引価格は 920ユーロ。
そこにポルシェ社が絡んでしたのは、まぎれもない事実でした。
その理由を明らかにする前に、世界の主要カー・メーカーの今年の株価推移をご覧ください。
今年上半期、原油高。 夏頃からはサブ・プライム問題の拡大による、各国信用創造の急速な
収縮による自動車ローン審査厳格化などにより、各社の株価は、VW社を除き、急落に近い
下落を演じています。 それが下の各オート・メーカーの株価チャートです。
(各メーカーの株価チャートは、Yahoo Finance U.K と、Yahoo Japan からお借りしています。)
まずは世界最大の自動車メーカー、 GM - ゼネラル・モータース社 。
続いて、フォード・モーター社 。
次はドイツに移り、メルセデス・ベンツ社。
さらにバイエルンのエンジン職人 (マイスター) と呼ばれている BMW 社 。
そしてポルシェ社も、夏前から低迷です。
では日本の自動車メーカーの株価はどうなっているのでしょうか。 車の販売台数ではGM社に
近づいた、トヨタ自動車 もこのとおり。 米国ではゼロ・金利ローンも実施計画ながら、下げ止まりません。
GT-Rの登場で脚光を浴びている 日産自動車も、世界の景気鈍化に勝てず。
海外に強く、最近新型オデッセイを発表した 本田技研も、このとおり。
それでは本日のテーマとした、フォルクスワーゲン社 の株価推移は、今年どんな形を描いたのでしょうか。
これです !
さらに さらに、「 過去 5日間 」 の、フォルクスワーゲン社 株価推移です。
すご~ い !
では何故にフォルクスワーゲン株が、こんなに高騰しているのでしょうか。
きっかけは 10月 26日にポルシェ社から公表されたこのステートメントです。
今回は夕刊フジ (共同通信社 配信) からの記事を、お借りいたします。
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2008年 10月 27日付、夕刊フジ記事より引用させていただきます。
独ポルシェ、VWへの出資比率42.6%に引き上げ
ドイツのスポーツカーメーカー、ポルシェは26日、同国の自動車大手フォルクスワーゲン(VW)に
対する出資比率を42.6%に引き上げたと発表した。ドイツ・メディアが報じた。VWに対する支配権を
一層強める狙いがあるとみられる。
ポルシェはこれまで30%超のVW株を保有する筆頭株主。年内に50%超まで出資比率を上げる
経営目標を示していたが、金融危機を背景に「市場の劇的な変化から経営判断した」としている。
さらに、ポルシェは経済事情が許し、規制当局の承認が得られれば、2009年中にVWへの
出資比率を75%まで引き上げる意向という。(ベルリン=共同)
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如何でしょうか。 ポルシェ社は議決権の 20 % を所有するドイツ・ニーダ・ザクセン州の特権である、
株主議決権の制限条項に対抗および撤廃実施するため、フォルクスワーゲン社の発行済み株式、
市場浮動株の大半を買い込むという計画を発表してしまいました。
またフォルクスワーゲン株を空売りしている投資家に対し、ポルシェ社によるフォルクスワーゲン株の
取得を事前に知らし、市場に警告を与えたので大騒ぎ。
ショートしている投資家が急いで買い戻す動きと、フォルクスワーゲン株の更なる上昇期待感が
伴う買いが顕著に表れ、フォルクスワーゲン社の株価は大幅上昇となってしまいました。
過去株式投資をやったことがないので、このままフォルクスワーゲン株が今以上に上がるかどうか
定かではありません。 ただ発行済み浮動株式の大半が ほとんど全部買い進まれるとしたら、
今回の VW社の株価上昇は、妥当な水準と言っていいのかもしれません。
世界の自動車メーカー・グループの再編が、また始まったようです。
現在の総資産から判断すれば、ポルシェ・グループは 世界最大のカー・メーカーとなりました。
金融恐慌から車の売上減で、またポルシェ社ががダメになるのではと推測された皆様、思いは逆でした。
来年は世界最大のカー・メーカーとして、活動できる可能性が高まったようです。
潤沢な手元流動性と、世界の主要銀行からの借り入れファシリティを兼ね備えたポルシェ社。
この混乱した金融市場に、あえて一石を投じるような経営戦略は、かなりのものだと思います。
我々の想像や憶測を、遙かに超えた カー・メーカーのようですネ。
ご覧いただければと願います。
その噂話と言うか、将来ポルシェ社におけるまた新しいモデル投入を匂わす記事が目に
入り始めていますので、簡単にご紹介です。 将来ポルシェ社も VW社ゴルフ・サイズの
小型乗用車 ニッチ層に参入の可能性があり、と報じています。
きっかけとして、急速に密な事業関係が構築され始めたポルシェ社とホルクスワーゲン社。
今度は小型乗用車部門において、ポルシェ社は 2012年から VW社 6代目となる ゴルフの
プラット・ホームを使い、小型新モデル投入を計画しているのではないかとの観測記事を掲載。
製造を、昨年及び今年春に正式に否定をしましたが、スクープ写真が撮られたことで密かに
計画が進行中と見る向きが未だ多いのが現状。 ポルシェ社による小型車モデル参入
見通しに関して、そのモデル名はまだ出てはいないものの、時代の流れに乗って方向性は
高まるのではないかとしています。
AutoBild 誌によると、改正フォルクス法案は可決はされましたが、予想通りその内容について
先週欧州委員会は再び難色を示したことで、VWがポルシェ傘下に入る可能性がより強まったこと。
さらに欧州および北米で、大幅 Co2 削減達成が目前に迫り、小型自動車分野への参入が
避けられなくなってきたことも大きな課題。
モデル投入の計画。 アウディ社のA3モデルと, A1の構想。 ファイアット社の Mi および Mo など、
小型自動車分野で高級車路線が徐々に定着し始めている中、ポルシェ社も当然指をくわえて
見ている訳にはいかないところでしょう。 魅力溢れる製品が揃うのであれば、小型車分野にも
チャンスありと思えるマーケット。 ゴルフのシャーシを使用し、ちょっと高級感溢れるフレーバーを
添えるのであれば、殴り込みをかけるには面白いジャンルかも知れません。
同誌はこれら仮定を元に、上記まことしやかなグラフィック写真を記事に添えています。
中身のような変な錯覚に陥ってしまいます。 正直、このスタイルは如何なものでしょう。
小型車は VW社が得意とする分野。 棲み分けを意識するのであれば、VW社にその全てを
任せても良いのではないのでしょうか。
個人的にはボクスター・ケイマンがポルシェのベース・モデルで十分なのではと思います。
VW社をポルシェ・グループの傘下に入れることを計画中。 以前より 50 % 以上の株式取得を
目指すと見られていましたが、今年 9月、場合によっては 8月まで、あるいは今年中に 恐らく
50.1 % まで VW社の株式を買い増すと示唆しています。
提案したものの、この提案そのものに拒否権が発動され、あえなく否決となったこと。 さらに
一昨日ドイツ議会で、改正フォルクスワーゲン法が承認されましたが、大株主であっても
その議決権は上限 20 % とする条項は撤廃。 しかしながら引き続きニーダ・ザクセン州の
拒否権が認められたことで、実質上ほとんど旧法案と変わらない格子となったことなどが、
VW社の株式買い増しを決定付けたようです。
存在し続けるため、VW社全体をコントロールできるわけではありません。 さらに今年4月の
VW社株主総会において、ポルシェ社の提案した拒否権廃止に賛同したのは全株主の 60.5 % 、
逆に反対票を投じた株主は34 %。 (残り 5.5 % の株主は欠席) となっています。 このため
将来より多くの賛成票割合を高め、仮に拒否権の発動が州政府からなされても、圧倒的な
株主数の意思表示を掲げることが、株式買い増しによって可能となります。
これに先駆け ヴィーデキングポルシェ社最高責任者 (CEO)は、「ポルシェ社、VW社は引き続き
体制を取ることになる」と述べ、グループ各社の経営戦略の違いと独立性を明確にしています。
世界の自動車メーカーの中で最も鋭い感覚を持つと言われているヴィーデキング・ポルシェ社
CEO、速攻を仕掛けるように次の一手を打ってきます。 欧州委員会を巻き込み、ドイツ連邦
共和国そのものを兵糧攻めにするのでしょうか。 自国を敵に回すような、まさに鎬を削る
経営者としての手腕が、また表明されたようです。
判決の出ていたフォルクスワーゲン法の改正を承認しました。 ただ今回の改正法案は、
未だ部分的にせよ地方政府にアドバンテージを残す内容となっており、ポルシェ社広報は、
「不当性は解消されていない」とのコメントを表明しています。
20 %を撤廃する内容となりましたが、引き続きニーダ・ザクセン州に株主議決の拒否権を与え、
かつ労組代表に取締役会の議席を用意。 工場閉鎖や主要議題に対して防御する権利を
付与する内容となりました。
違憲部分となっているニーダ・ザクセン州政府の拒否権破棄を、司法判断に委ねるために提訴。
未だ改正 VW法が欧州憲法に合致していないため、今後欧州委員会が再度の改正指示を
出してくる可能性も残り、ドイツ政府は更なる法案修正に迫られるかもしれません。
憲法と対立するものではないと表明。 ドイツ国内でVW社の従業員は約 17万人存在し、
うち 8万人がニーダ・ザクセン州の VW社で働いていることもあり、地方政府による雇用保護の
現状維持が当面続くと思われます。
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