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フォード・エンジニアの作ったメモによると、フォード社は1995年型モデルのエクスプローラーから
風防ガラスが破損した場合にねじれが生じる車の屋根部分の補強強化を考えた。
当時の記録を見ると、衝撃から来る屋根の破損を補強するため、屋根を支える B-ピラー (前席
シートの横にある屋根を支えている柱) を補強し、A-ピラー (風防ガラス近くの柱) の材質を一般
鋼鉄からより強度を持った高柔軟鉄への変更を提唱した。
2003年 1月に行われたエンジニアの法廷証言によると、フォード社は連邦政府の基準を満たして
いるとし一切の変更を加えなかったのであるが、かりに補強していたらエクスプローラはより安全な
車となっていたと述べている。
1996年初旬 B-ピラーは補強され、屋根の破損に対しては現行のモデルより数段安全性を増したと
当時の社内デザイン・レビュー報告書は示しており、これもニュージャージー州で起きている訴訟に
今月用いられる予定である。 1987年にエンジニアが警告した補強策をとっていたのであれば、
政府の不十分な基準を上回る頑丈な屋根となっていたであろう。 「横転事故からもたらされる
屋根の破損や運転手の車外放出などの致命的損傷は、乗用車よりもライト・トラックの方が
はるかに多い。 エクスプローラーはまさにライト・トラックなのである」と、1987年 7月にエンジニアに
よって報告書に記載されている。 法廷では「フォード社はエンジニアの提唱を受け入れるべきで
あった」と弁護団は問いつめている。
また当時のシート・ベルトの欠陥やサスペンションの問題も取り上げられている。 横転事故の際、
シート・ベルトが正常に機能しなかった疑いがあること。 サスペンションに関しては砂利道などで
車体が揺れたり、ハイウェイで減速した場合に、ホィールがスケートのように滑っていく症状が出る
ケースもあるようだ。 この症状での死傷事故の報告も上がっており、ファイア・ストーン社のタイヤ
破裂以外でコントロールを失った事例が出ている。
この症状で事故にあった関係者は現在法廷審理で、ベネズエラのエンジニアが提唱した
下サスペンションの取り付け位置変更を持ち出し、エクスプロ―ラーは重心が高い反面、
サスペンションは柔らか過ぎ、特に悪路で横転する要因となるのではないかと述べている。
さらに弁護団は 1998年 7月にエンジニアが、「エクスプローラーは悪路/オフロードで
スリップや制御の難しさ」を指摘した文章を法廷に持ち込んでいる。 1996年初めには、エンジニア
3名が、ショック・アブソーバーを変更し、スケート症状を防ぐべきであると警告している。 フォード社の
エンジニアは、「車が滑るスケート状態は、とくに悪路で乱暴な運転をしたときに顕著に見られる」とし、
「単独車輪動作になった場合や道路穴に遭遇した場合に現れやすい」と述べている。 さらに
ベネズエラのエンジニアは、「このような症状は悪路を高速で走行していた場合、例えば 時速
100マイルで走行時、道路の傾斜などをヒットしたときに見受けられる」と述べている。 ただ実際
遭遇したドライバーの中には、65マイルで走行時にトレッド破損前にこの症状が現れたと供述
している者もいる。
フォード社は 2002年型新モデル 4ドア車から後部を独立懸架サスに変更し、滑り現象を解決したが、
2ドア車は手が加えられることなく、2003年モデルで生産終了となった。
昨年 11月、フォード社は 「2005年モデルから新しい横転制御装置を装着する」とし、また 「2002年
からの現行モデル 4ドア車は横転事故の危険性はきわめて少ない」との証言を法廷で示している。
現在の新型モデルの安全性はともかく、問題は今でも数百万台以上の旧型エクスプローラーが
まだ道路上を走っていることであろう。
了
注) 一部文章、証言や一部氏名・会社名などを省略しています。
現行モデルはまず大丈夫だと思いますが、どんな車であっても悪路走行はくれぐれも注しましょうね。
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