ヴーデキング・ポルシェ最高責任者は、ドイツ政府およびドイツ各州の知事に、欧州高等裁判所で違憲
判決が出た 「フォルクス・ワーゲン法」の改正草案に強く反対。 再度の検討を求めるため、各党首などに
改正法案の再考を求める 抗議書簡を送ったと、昨日 E-Mail で発表しました。
「 フォルクスワーゲン法 」 は 48年前に制定された、既にオールド・ファッション化が漂うドイツ 国内企業
保護法案なのですが、VW社の株式総数の 20 % 以上を所有してもその議決権は株主総数の20 % しか
議決権を与えないとする法案となっています。
ポルシェ社は VW社との合併を画策。 昨年から買い集め、VW社株式の約 31 % を保有。 第 2位の
株主は、VW社の本社所在地であるニーダ・ザクセン州 ( Lower Saxony ) が その 20 % を所有しています。
ところが仮に VW社の株式を 50 % 以上保有しても、その議決権が 20 % しか与えられないため、
大株主が 例えば工場閉鎖などを主張しても、実際否決されるという矛盾を含んだ 法律となっています。
昨年 10月 23日、欧州統合諸国全体を司る 欧州高等裁判所は、ドイツのVW法が欧州域内 全体の
資本の流動化を妨げるとし、この法案に対し違憲判決を下しました。
ただニーダ・ザクセン州は、今年 1月 27日に総地方選挙を控えていたこともあり、ポルシェ社は具体的な
アクションが取れない状況になっていました。
一方ドイツ連立政権の首相であり、キリスト教民主同盟 (CDU) 党首であるメルケル独首相、および
ザイプレス法務相が推し進めている VW法案の改正は、引き続き大株主に対し 20 % の議決権しか
与えないとする内容が含まれ、ポルシェ社が VW社の買収を阻止する内容。
その上 VW法 改正法草案は、株主総数の 2/3 の賛同を集めないとリストラや工場閉鎖提案が事実上
出来ないとするもの。 特に労組が半分を占める取締役会議に於いて、そのような変更は事実上不可能な
制度となっています。
1月 27日に実施されたニーダー・ザクセン州の地方選挙では、ウルフ (キリスト教民主同盟) 州知事が
再選。 同知事は、「ザイプレス法務相の改正法案を支持する」 と述べ、VW法の大幅改正に関し、
否定するコメント表明しています。 また独政府法務省広報部も、「現在の法改正草案に、何ら変更は
ない」との、否定的なコメントを表明しています。
これら一連のドイツ政府による 産業保護政策法 改正法案の遅延に対し ポルシェ社および同社取締役
会議は、独性府および連邦地方に対し、抗議を表明。 ドイツ連立政権首相を始め、ドイツ連邦各州の
知事、並び関連各省に自社顧問の法律事務所を通じ、抗議声明を送付。 欧州委員会や欧州裁判所までも
巻き込んだ、法廷闘争に持ち込んで行く可能性が高まりつつあるようです。
結末はまだ判りませんが、ポルシェ社は VW社との合併を諦める気配はなく、一方ドイツ政府はそれを
阻止する戦略に奔走する可能性大。 企業と政府の攻防戦がますます強まりそうです。
ひょっとしてポルシェ社は、今年一層の VW社株式の買い増しをするかも知れません。
そういやポルシェ社は昨年末に、10億ユーロのハイブリッド社債を発行していましたよね。
バナメーラの生産資金への用途と言われていますが、買収資金に使用されることもあり得るかも知れません。
朝青龍以上の注目が集まりそうな、独政府とポルシェ社のバトル・ロイヤル。 目の離せない取り組みと
なりそうです。 ここは一つ、内館 牧子横綱審議委員より、やく みつる氏にでも登場してもらい、判断を
下していただきましょうか。 千秋楽はまだまだ先だと思いますが、今年の欧州自動車産業界における、
結びの一番となりそうです。
Powered by "Samurai Factory"