夢を売る会社 リンカーン . . . . . . . .
松田優作ではないですが、初めて フル・モデル・チェンジしたリンカーン・ナビゲーターを写真で見たとき、
思わず 「何じゃこれ」って声を上げてしまいました。 なんとも形容しがたい古風な姿に、最初
中古ナビゲーターの写真と思いきや次期新モデルとのこと。 リンカーン社は、なに気にこんなデザインに
したのか理解に苦しんだのは私だけではないのでしょうか。
まるで米国版 光岡自動車と思った次第ですが、理由がわったような気がします。 . . . . . . . . . . . . . . .
今年 6月 16日、リンカーン社は 「夢 ( dreams )」 というタイトルの元、今後リンカーン・ブランドを
持つことで「アメリカン・ドリームをつかもう」とのキャンペーンを発表しています。 上記アップした写真、
劇場入り口の看板に、「あなたは脚本家であり、監督であり、そしてあなたの夢を 作り上げる
演出家である」と表示した、リンカーンの CMです。 このアメリカン・ドリームには恐らく 2つの意味が
含まれていると勝手に想像しています……、
一つは丸太小屋の質素な家庭に生まれたエイブラハム・リンカーンは、努力の積み重ねで米国初代
大統領にまでなりましたが、この成功を 「アメリカン・ドリーム」 を成し遂げた人物と称しており、
自社名リンカーンと准えたこと。
そしてもう一つは 1950年後半~60年にかけて、大戦勝利で米国が最も栄え、自信に満ち溢れ、
リンカーン社を含む現ビック・スリーが次々と大型車生産で伸びていったこと。 それが今ではどうでしょう、
海外メーカーに押された3社の凋落には危機的なものがあり、米国社会もテロ、戦争、原油価格の
上昇などで、暗い影を落としています。
すなわち回顧録的自社アピールが含まれた「アメリカン・ドリーム」という言葉で、「原点に返ろう」、
「あの頃を取り戻そう」、あるいは 「昔はよかった」などのイメージを作り上げ、自社ブランド車の販売
促進攻勢を仕掛け始めたようです。 . . . . . . . . . . .
ではどんな顧客をターゲットとしているのか。 それはずばり「ベビー・ブーマ」でしょう。 日本と時を同じくし、
米国でも戦後、子供の数が急速に増えていきました。 この年代層をベビー・ブーマーと呼んで
いるのですが、 日本では「団塊の世代」となり、少し黄昏を感じます。 当時生まれた赤ちゃんは現在
すでに 50~60歳に差し掛かっており、ある程度の収入と退職金などで 預貯金が手元にある、
企業にとっては一番おいしい年齢層といえるでしょう。 また逆にこの時代の人々は プレスリーや
マリリン・モンロー、少し後にビートルズなどに感化された少年時代を送った人々であり、 レトロ・
フレーバーを最も吸収してくれる年代なのではないでしょうか。
当時のリンカーン・ブランドは高級かつ大型車が中心であり、テールが飛行機の尾翼のようになった
乗用車は 高嶺の花で、無理をしても買えなかった年代でもあります。 それを今手にすることにより
やっと夢が現実化し、 「アメリカン・ドリーム」をつかみましょう ! とのキャンペーンが効果を発揮すると
考えられます。
ただ現自動車業界の環境下において ちょっとヘソを曲げて見てみると、これはユーザーに対して
「夢を持とう」と 述べているのではなく、リンカーン自体の販売が伸びてくれないかとの「夢」を持ち
続けているとも推測できますね。 まっ そこまで懐疑的に言わなくても.....でしょうが。 (笑)
その肝心なデザインが一新された2007年新型 リンカーン・ナビゲーターですが、もうこれ以上ごちゃごちゃ
書く必要もないと思われます。 エクステリア、インテリアなどの細部や質感はまったく違うものの、
その性能、エンジンと車体寸法は 2日前にご紹介した 2007年新型 エクスペディションとほとんど同じです。
今日はぜひ写真でお楽しみください。 . . . . . . . . . . . .
また今回ナビゲーターにもストレッチ版が加わり、エクスペディションでは 「 EL 」 と表示されるものが、
ナビゲーターでは 「 L 」 で区別されます。
デザインの好き嫌いは別にして、果たしてこのキャンペーン 吉と出るかまた否か…….。
「セーラー服と一晩中」じゃなかった、「セーラー服と機関銃」を作曲した 来生たかおの「夢の途中」でも
聴きながら、リンカーン社の将来を推測してみることにいたします。
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